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【No.1】 生物アレルゲンの代表選手「コナヒョウヒダニ&ヤケヒョウヒダニ」~ハウスダストを貯留させない工夫が対策の王道!~

  • 執筆者の写真: 康夫 緒方
    康夫 緒方
  • 2024年10月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:3月17日

筆者が『生物アレルゲンの代表選手は、何でしょうか?』と問われて,筆頭に挙げるのはチリダニ科(Pyroglyphidae)のコナヒョウヒダニ Dermatophagoides farinae) (英名:american house dust mites:図1)とヤケヒョウヒダニ Dermatophagoides pteronyssinus (英名:european house dust mites:図2)です(以下,DfおよびDpと称する)。

     コナヒョウヒダニ Dermatophagoides farinae) (英名:american house dust mites:図1               

     ヤケヒョウヒダニ Dermatophagoides pteronyssinus (英名:european house dust mites:図2


これは,生物アレルゲンを研究する研究者の共有認識だと思います。

既に1960年代には,ハウスダスト中のチリダニ科の増減が「アレルギー性小児気管支喘息」と相関があることが報告されています。


ダニ相を調査した多くの文献から見ても,ハウスダスト中には洋の東西を問わずチリダニ科のダニが大半を占めており,とりわけこの2種が優占種となっています。


ハウスダスト中のヒトのアカやフケ,食品クズ,微小昆虫の死骸などを餌として繁殖し,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,慢性蕁麻疹などのアレルゲンとなります。


様々な環境因子や食生活の変化から,現代人の二人に一人は何らかのアレルギー疾患を患っているようで,そのうち70~80%はダニ(Df & Dp)アレルギーであるとの報告があります。


DfDpの死骸が乾燥してできた微細片や排泄物の微粒子は,呼吸器や皮膚の汗腺から侵入してアレルギー症状を引き起こします。


 筆者がハウスダスト中のダニ分析の仕事を始めた1980年代初頭の頃は,畳のある住宅が多く,どの住宅を調べてみても「刺咬害を及ぼすツメダニ類」をはじめとする10種前後のダニ類が分離されました。


ところが,住宅形態と寝具の形態が大幅に変わった現代の住宅ではダニ相も大きく変化し,数種のダニしか分離されなくなりました。

更に,近年の筆者らの調査研究から,地域や住宅形態の違いによってDfまたはDpのどちらか一方が優占種となっていることが明らかになってきました。


1つの住宅に両種が混在していることは少なく,DfまたはDpのどちらか1種のみがその住宅の最優占種として90%以上を占めている傾向にあります。

表1に示すように,両種には生態的な違いがあり,Dfの方がDpよりも乾燥に強いことが主たる要因であると推察しています。


 対策については,ハウスダストを貯留させないことが第一です。

現代の多くの住宅は,気密性が高く,一年を通して室内温度に極端な高低差がなく,かつ物が多くなりました。言い換えれば,ハウスダストが貯留しやすく(=ダニが潜伏する場所が多く),季節を問わずダニが繁殖しやすい環境を提供していることになります。



表1 コナヒョウダニ(D.farinae)とヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)の生態的相違点

特徴
D.farinae
D.pteronyssinus
臨界平衡湿度
65%R.H.
55~60%R.H.
増殖開始湿度
47~50%R.H.
55~60%R.H.
優先住宅の湿度
51.5%R.H.
63.5%R.H.
繁殖ピーク時の最適温度
60~70%R.H.
80~90%R.H.
発育好適湿度
60~70%R.H.
75~80%R.H.
発育休止若虫
出現する冬季に若虫が発生する
通常、出現しない季節的変動は少ない


リビングルームや寝室の壁に接する場所に何か物が置いてあり,その場所にずっと掃除機がけをしていない! ~心当たりはありませんか?


もしあるとすれば,その場所がダニの巣窟になっている可能性大です。また,ベッドは万年床で,寝具がダニの繁殖源となっていることは周知の事実です。

シーツや枕カバーのこまめな洗濯。マットレスの掃除機がけ(吸引力が強く,排気口から微粒子を出さないタイプ)と3~4週間に1回はベッドのローテーションを実施することがダニ対策の王道です。


ベッドローテーションの際に,マットレスを立てかけて(できれば日光を当てて)湿気を抜くこともお勧めします。


ダニは夏季から秋季にかけて繁殖のピークを迎え,その後にアレルギー疾患が多発する傾向にあることから,10月~11月のよく晴れた日に大掃除を行うことがベストです。


年末の忙しくて,寒い季節に大掃除を行うことは現代のライフスタイルに合っていません。本格的な寒さを迎えて暖房器具を使う季節は,窓を大きく開放して,エアコン,カーペット,カーテンなどの大物を洗浄する気になりません。


大掃除を怠ると冬季の結露によるカビ発生と春先のスギ花粉飛散がさらなる追い打ちをかけ,アレルギー症状を増長させることが懸念されます。


                 (文章責任:川 上 裕 司)


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